人はいつの間にか齢を取る。生きている以上それは避けられない現象である。あの頃は若かったはずなのに、気がついたらどうして俺はこんなおじさんになってしまったんだ……。そんな男たちの慟哭がスクリーンの裏側からしょぼしょぼと聞こえてくるような作品が『ゆりに首ったけ』だ。
明らかに若くはない4人のおじさんたちによるトークの中で次第に浮かび上がってくる「ゆり」の正体。果たしてゆりとはどんな女なんだ? という観客の期待をよそに、姿を見せないまま映画は進む。
ゆりに真正面から相対しているおじさん、ゆりと過去にあんなことこんなことがあったおじさん、それぞれの嬉しみ哀しみがぞろぞろと噴出する様は、たぶん居酒屋の隣のテーブルで2次会くらいになった人たちのトークに過ぎないのかもしれない。そしてゆりみたいな女の話だって結構聞くじゃない。黙っていろんなことをしている女の話。それでも次、どうする? どうなる? と展開を期待しちゃうのは、身に覚えがあるからなのか、それとも単に野次馬だからなのか、あるいはその両方だからだったりして。
ゆりを手に入れたつもりが、ぶんぶん振り回されっぱなしのおじさんたちは、それでも夢を見続けていくのだろう。どこまでもファンタジーに生きていく彼らを見ながら、男って学習しないんだなと思うけど、それでも少しかわいい(全てのおじさんがかわいいとは言い切れないので「少し」と書いておく)生き物だよねと妙に腑に落ちたのだった。
2023年12月1日(金)まで、池袋・シネマロサにて公開。
12月16日(土)~12月22日(金)まで、大阪・シアターセブンにて公開。その後全国順次公開。