かつて、家が欲しくて欲しくて仕方がなかったことがあった。その時は3DKのアパート住まいだったけど、子どもたちが揃って小学生になってからは本当に手狭でどうしようもなくなっていて、一刻も早くここから出たい、上下両隣に気を遣わずに自分たちだけの空間で生活したいと思っていた。
家を買おうかなと思う人だったらたぶん共感してくれると思うけど、そうやって躍起になって必死に探している時ほど条件に合う物件は出てこない。出てきたとしても住み始めて時間が経つと思わぬ問題が起こってくることもある。
9月1日公開の映画『スイート・マイホーム』(監督:斎藤工、原作:神津凛子)は、まさにそのような「家が欲しくて欲しくてたまらない家族」の盲点をついた話である。
極寒の地・長野県に住むスポーツインストラクターの清沢賢二は、愛する妻と幼い娘たちのために念願の一軒家を購入する。“まほうの家”と謳われたその住宅の地下には、巨大な暖房設備があり、家全体を温めてくれるという。
理想のマイホームを手に入れ、充実を噛みしめながら新居生活をスタートさせた清沢一家。だが、その温かい幸せは、ある不可解な出来事をきっかけに身の毛立つ恐怖へと転じていく。(公式サイトより)
極寒の地に住んだことがないからどのくらいの肌感覚なのかはわからないけど、信州の冬は床暖房や薪ストーブ、暖炉を入れないと大変という話は聞いたことがある。幼児を抱えながら「底冷えがする家」で暮らすのは困難で、早く引っ越したいのは当然というのがこの話の1つの伏線になっている。
あとは映画を観ていただきたいんだけど、賢二に秘密があるわけですね。その秘密をどう隠し通すか、賢二の兄の存在は何を示すのか、住宅展示場の面々が何を思うのか。そんなところを注目しながら観ていくと面白いかも。最も、いくつか「それってどうなの?」みたいなシーンはあったけど、まあ言わないでおきます。斎藤工くんの監督だし、ネタバレになるから。
賢二たちが家を決めるのに、そこって選んじゃいけないんじゃないの? みたいなポイントがちゃんとあって、でもしっかりとNGの方を選ぶところが物語なんですね。あなたたちもっとよーく考えなよ、他は見たの? とか言いたくなるけどそこはお約束で。
でもその気持ちもわかる。どうしてだかわかんないけど、自分たちの最もツボった条件がクリアされてしまうと他のことが見えなくなっちゃうんだよ。立地がいい、間取りがいい、お値段がいい、だからここにした。でも住んでみたらお隣に意味不明な住人がいたとか、地域に嫌なしきたりがあったとか。だから家なんて買うのは非常に面倒くさいし、100%満足の家なんてないからさ。
しかも建売ならまだしも賢二たちは注文住宅ですからね。注文住宅は建売の100倍厄介だから(苦笑) ドアノブ1つとっても「どれですか」って聞かれる。あんまりにもいろんなこと訊かれて嫌になって結婚するのやめた人たちを知ってます(苦笑)
個人的には戸建買うんなら中古(しっかりしたやつ)で十分だと思ってて、それだって必ずしも買わないといけないってわけじゃない。家は持ったら持ったでメンテナンスは自分たちでしないといけないから、その点管理会社がやってくれるマンションの方がいいこともたくさんある。なんなら賃貸にして、そこが嫌になったらさっさと引っ越せるメリットもありますよね。とにかく家なんてでかい買い物はよくよく調べて本当に慎重に。間違えると家族が狂うよ〜! というお話なのでした。